糖尿病の症状について解説

糖尿病は現代病とも言われ、糖尿病一歩手前の予備軍も含めると2,000 万人にも上ると推計されていますから、ほぼ6人にひとり、一家族から二家族の誰かが糖尿病と考えてもよいくらいです。

そんな糖尿病は「サイレントキラー」とも呼ばれ、初期症状を自覚しづらく、健康診断ではじめて糖尿病と診断されることも少なくありません。

しかし、健康診断で発見される方がまだましで、自覚症状が現れたころにはある程度進行してしまっていることも多く、不幸にも合併症が現れてはじめて糖尿病に気づくこともあります。

糖尿病の98%以上を占める2型糖尿病の大きな原因である「食べ過ぎ」「飲み過ぎ」「肥満」「運動不足」などがあてはまる方や40歳以上の方は、特に日ごろからの注意が必要です。

糖尿病の症状

異常にのどが渇く

血糖が高くなると脳は脱水症状であると判断し、血糖を正常に戻そうと脳からは常に水分補給の命令が出続けてしまい、激しいのどの渇きを感じるようになります。

頻尿や多尿

歳をとるとホルモン分泌の関係や膀胱の機能低下によって夜中にトイレに行きたくなるなど、頻尿になると言われています。

しかし、頻尿や多尿は糖尿病の症状のひとつでもあります。

糖尿病による異常なのどの渇きを感じて水分を頻繁に摂ることで、水分が吸収しきれずに尿として排出され頻尿や多尿になります。

また、糖尿病が進行すると神経にも障害を及ぼし排尿をコントロールできなくなり、頻尿や残尿感などの症状も起こります。

疲れやすい・体がだるい

糖尿病になると「インスリン」の働きが悪くなり、糖を細胞に取り入れエネルギーとして活用する機能に異常(糖代謝異常)が生じます。

また、糖代謝異常が生じると糖だけでなくたんぱく質や脂質の代謝異常にもつながりやすくなってしまいます。

このような状態になると細胞に栄養がうまくいきわたらず細胞が栄養不足となり、結果的に「疲れ」や「だるさ」を感じやすくなります。

手足のしびれがある

糖尿病の場合、血糖の高い状態が続くことで細小血管が障害を受けやすくなっています。

細小血管の血流が悪くなることによって神経細胞が必要としている酸素や栄養が十分に行きわたらなくなり神経障害が起こり、感覚障害のひとつとして手足のしびれが現れます。

足がむくむ

日常的に足がむくむということはよくあることですが、朝になってもむくんでいる状態が続く場合、高血糖状態が続くことにより腎臓が酷使され腎機能が低下してしまう合併症「糖尿病性腎症」の可能性があります。

糖尿病性腎症によって体内の水分量がうまく調節できなくなり、むくみが出やすい状態となります。

体重のが急な減少

糖尿病の初期は体重が増加する傾向があるのですが、糖尿病が進行してくると血糖がうまく取り込めない状態が続きます。

血糖がうまく取り込めない状態が続くと、体の器官や組織自体が栄養不足となるため異常をきたし、取り込んだ栄養も吸収できずに排出してしまう悪循環が起こり、体重が急に減ってきます。

その他の症状

糖尿病の症状には、その他にも下記のように様々なものがありますが、後述の合併症の症状もあります。

  • 目覚め・寝つきが悪い
  • 皮膚のかゆみ・かさつき
  • 視力が落ちた気がする
  • 甘いものが急にほしくなる
  • 食欲がありいくらでも食べられる
  • 立ちくらみがある
  • 尿のにおいが気になる
  • 軽度の火傷や傷の痛みを感じない
  • 尿が出にくく残尿感がある
  • 肌がかゆい、かさつく
  • 月経異常(女性)
  • 性欲減退(女性)

糖尿病の合併症

糖尿病の合併症には慢性合併症と極度のインスリン作用不足によって急激に起こる急性合併症に大別されます。

慢性合併症は細い血管にみられる合併症(細小血管障害)と、太い血管にみられる合併症(大血管障害)などがあります。

糖尿病の慢性合併症

細小血管障害
糖尿病網膜症
糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。
糖尿病腎症
腎臓の糸球体は毛細血管の塊で、長期間の高血糖によって網膜と同じく血管障害や膜に変化が起き濾過機構が破綻する病気です。
糖尿病神経障害
糖尿病の合併症で最も早期に現れるもので、毛細血管の障害によって血流が低下することなどで生じてきます。
手足のしびれや痛み、感覚が鈍くなる、下痢や便秘、顔面神経麻痺など全身に様々な症状がでてきます。
大血管障害

高血糖の状態が続くと太い血管では動脈硬化が加速し、脳梗塞、狭心症・心筋梗塞などや閉塞性動脈硬化症などの合併症を起こしやすくなります。

脳梗塞
脳の血管に動脈硬化が起こると脳梗塞や脳出血などのリスクが高くなり、脳梗塞が起こる頻度は、糖尿病でない人に比べて2~4倍高いといわれています。
狭心症・心筋梗塞など
心臓の血管に動脈硬化が起こると狭心症や心筋梗塞などのリスクが高くなり、心筋梗塞を起こす頻度は健康な人の3倍以上で、はっきりした自覚症状がないのが特徴です。
閉塞性動脈硬化症
足の太い血管に動脈硬化が起こると血液の循環が悪くなり歩行が困難になり、悪化すると痛みで歩けなくなり、さらに潰瘍や壊疽(えそ)を起こし、場合によっては足を切断することもあります。
その他の慢性合併症
糖尿病性足病変
糖尿病になると細菌などに対する抵抗力が低下するため、白癬菌症(水虫)に感染しやすいといわれています。
歯周病
高血糖が続くと歯周病が悪化するといわれており、さらに歯周病は心筋梗塞や呼吸器疾患、低体重児出産などを引き起こす誘因となる可能性も指摘されています。
認知症
高齢の糖尿病患者のアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の起きるリスクは、糖尿病でない高齢の人の2~4倍といわれています。

糖尿病の急性合併症

糖尿病ケトアシドーシス
1型糖尿病が発症した場合やインスリン治療を中断した場合、インスリンが不足することによって血液が酸性(ケトアシドーシス)になり、のどが渇き水分を多量に飲み、尿の量が多くなります。脱水症状がみられ、さらに進行すると血圧が下がるとともに意識障害がでて、最終的には昏睡にいたります。2型糖尿病ではまれとされてきましたが、最近では若い人や肥満の人にも起こっています。
高浸透圧高血糖症候群
高齢の2型糖尿病の患者に起こりやすく、感染症や脳血管障害、あるいは外科手術などをきっかけに、血糖の上昇と水分の補給不足を起こし脱水状態となり、進行すると意識障害が起こるあります。
感染症
糖尿病になると肺結核や尿路感染症、皮膚感染症などの感染症にかかりやすくなり、足の皮膚感染症は壊疽(えそ)の原因にもなります。

以上、糖尿病の症状について解説しました。

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