糖尿病には、
- 1型糖尿病
- インスリンを産生する膵臓の細胞(膵β細胞と呼ばれます)が破壊・消失することで発症する糖尿病
- 2型糖尿病
- インスリンの作用不足で血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる糖尿病
- 遺伝子異常による糖尿病
- 膵臓のβ細胞機能に関わる遺伝子異常やインシュリン作用の伝達機構に関わる遺伝子異常で発症する糖尿病
- 他の疾患や条件に伴う糖尿病
- 膵臓外分泌疾患や内分泌疾患、肝疾患や薬剤・化学物質によるもの、感染症や免疫機序によるまれな病態などが原因で起こる糖尿病
- 妊娠糖尿病
- 妊娠中に血糖値が高くなったり、血糖値が高い状態が初めて発見された糖尿病
などがありますが、今回解説するのは糖尿病全体の98%以上を占める「2型糖尿病」の病院で行われる一般的な治療方法を解説します。
2型糖尿病の治療方法
2型糖尿病は、食べすぎや運動不足、ストレスなどの生活習慣の乱れと、その結果起こってくる肥満などが主な発症原因と考えられ「生活習慣病」と呼ばれています。
生活習慣の乱れや肥満によってインスリンの働きが悪くなり、血糖上昇などの代謝異常を招き糖尿病が発症することから、通常の2型糖尿病の治療としてまず行うのは「食事療法」と「運動療法」によるライフスタイルの改善と、肥満状態の場合にはその解消です。
それでも改善が見られず進行する場合には必要に応じて薬物療法が追加されます。
そして、目標となる検査数値として、合併症予防にはHbA1c7%未満で、血糖値の正常化にはHbA1c6%未満を目指します。
食事療法
糖尿病治療の中でも、誰もが必ず行う必要のある基本的治療が「食事療法」です。
血糖上昇を抑えるのみならず、血圧の正常化や脂質代謝なども考慮した正しい食事療法を励行することでエネルギーの摂取量が抑えられ、血糖値を下げるために必要なインスリンの量を減らすことができます。
また、同時に肥満も解消されて行き、インスリンの働きをよくすることもできます。
食事療法の方法
- 3食均等に規則正しい食事
- よくかんでゆっくり食べる
- 1日のエネルギー量は、男性で1,400~2,000Kcal、女性は1,200~1,600Kcal
- 糖質(炭水化物)55~60%、蛋白質15~20%、脂肪25%の栄養配分
適切な食事療法を実践するには、病院での栄養指導を受けたり糖尿病教室を受講したり、『糖尿病食事療法のための食品交換表』(日本糖尿病学会編、文光堂発行)を使用して、自宅で実際に食品を計量することが大切です。
また最近の研究では、「水溶性食物繊維」を積極的に摂ることで、腸内のインスリンを出すスイッチであるインクレチンという腸のホルモンが増え、血糖値上昇よりも早くインスリンの蓄積・分泌を促進させることがわかってきました。
外食や総菜などについては、出来る限り栄養表示のあるものやお店を選び自分で管理する必要があります。
アルコールに関しては、合併症や肝障害のある人は禁酒ですが、そうでない場合でもできる限り制限すべきです。
1日の適正な必要エネルギー量の計算方法
1日の適正な必要エネルギー量は、
「標準体重」×「身体活動量」
で計算されます。
- 標準体重
- [身長(m)]2×22(標準体重のBMI値)
- 身体活動量
-
25~30 やや低い
(デスクワークが主な人・主婦)30~35 適度
(立ち仕事が多い職業)35~ 高い
(力仕事の多い職業)
例えば、身長170cmで事務職の方だと
- 1.7×1.7×22×25~30 ≒ 1,600~1,900Kcal/日 となります。
運動療法
まず、運動療法は食事療法と同様に糖尿病の基本となる治療方法ですが、病状によっては運動をしてはいけない場合もありますので、必ず主治医と相談し指導を仰ぐことが必要です。
糖尿病の運動療法に適しているのは「有酸素運動」です。
有酸素運動をすることでエネルギーが筋肉で消費され、エネルギーを供給しようとして筋肉が血液からブドウ糖をどんどん取り込んでくれるため、血糖値が低下します。
運動療法の主なポイントとして以下のような事が考えられます。
- 場所を選ばずひとりでできる運動を毎日同じだけ行う
- 運動は1日30分が目安(朝晩2回に分けても良い)
- 運動の強さは、きつすぎず、楽すぎず
- 食後1~2時間後に行う
- 運動日誌をつける
最もおすすめなのは、思い立った時にいつでもできて安全な「ウォーキング」です。
歩幅を意識して大きくとり、心拍数が100~120になるくらいの速さで歩くと良いとされています。
理想は1回あたり20分~30分の継続ですが、まとまった時間が取れない場合は小刻みでもかまいませんから、目的の駅よりひと駅手前で降りて歩くとか、少し遠回りをするとか、日々のちょっとした意識で実行できます。
薬物療法
食事療法と運動療法を2~3カ月励行しても血糖コントロールができない場合は、薬物療法で血糖値の改善を図ります。
主な薬物療法には、血糖値の上昇を下げるための「血糖降下薬」という飲み薬と、インスリンがほとんど分泌されない人や不足の人のためのインスリン注射があります。
特にインスリン注射は、不足している、もしくはうまく作用していないインスリンを補い、自分の膵臓を休める役割もあり、最も体に優しい治療法ですから、決して糖尿病がひどくなったから用いるものではありません。
血糖値が上昇する原因には「インスリン分泌量の減少」「インスリン感受性の低下」「肝臓からの糖放出増加」「血糖値を上昇させるホルモンの増加」などがあり、それぞれの原因にあった血糖降下薬が選択される必要があります。
また、薬の有効性を維持し肥満を防ぐためにも、状況に合わせた食事療法と運動療法の継続が大切です。